JGAP認証取得と現場の効率化によってスムーズに規模拡大
IT化実現と「世界で選ばれるタマネギ」の夢へ/池上農場代表齋藤亜紀美さん

“行き当たりばったり”からの脱却目指す

兵庫県・淡路島でタマネギ栽培を手掛ける池上農場。代表の齋藤亜紀美さんは2011年にUターンして父が運営する同農場で就農、2019年に事業を継承しました。現在は10ヘクタールの農地で年間約550トンを出荷。オリジナルの竹粉を肥料に混ぜ込み、化学肥料と農薬を慣行栽培の5割以上削減した特別栽培のタマネギを「あやたけ」としてブランド化しています。

支援を受けようと考えたのは事業を継承する際でした。「それまで作付面積も月次の出荷量もきちんと把握しておらず、採れた量を売るという行き当たりばったりの状態。農薬の種類や量も、父の経験と勘だけが頼り。課題だらけでなんとかしなければという思いでした」と齋藤さん。計画的な生産と販売の体制構築を目指し、支援を受けることを決めました。

業務を整理・俯瞰し計画的な経営へ

実際にエグゼクティブプランナー・中尾さんの支援が始まると「最初は大変でした」と、齋藤さんは苦笑します。まずは生産面の改善を行うため、JGAP認証を目指すことから始まりました。しかし、多忙な作業の合間に、JGAP認証に向けて農場全体の業務を一つ一つ確認・整理していくことはかなりの労力を要しました。「でも仕事の全体像が把握できてくるとやる気が出て、頑張れました」。その結果無事に認証を受け、さらに面積あたりの収量や月ごとの出荷量、売上高なども把握できるようになり、作業の取捨選択も行って効率が向上。「中尾さんが現状と課題を整理して示し、改善策の提案をしてくださったことで、やるべきことが明確になりました」と振り返ります。

事業継承時から規模拡大を念頭に置いていて、すでに大規模な冷蔵貯蔵倉庫を新設。今年中に3ヘクタールの農地を新たに取得し、新規雇用も行う予定です。拡大に先立って事業全体を整理し俯瞰できるようになったことは大きなメリットでした。「採れた分を売る、ではなく、先に作付面積から収量を割り出すことで計画的に収穫・販売ができ、人の配置も無駄がなくなりました」。

「世界レベルのタマネギ」で地元農業を豊かに

栽培管理も行うため、オペレーションのIT化支援も受けています。一つはタブレット端末を活用した農作業の管理システムです。点在する広大な農地に遠隔で作業指示を出せれば、大幅な効率アップが図れます。もう一つは受注と出荷のシステムの構築です。現在は紙ベースの手作業で行っていますが、時期によって繁忙期には100件以上の販路を持つ同農園ではデジタル化が急務。「IT導入は念願だったけど、自分にできるとは思っていなかった。支援のおかげで足を踏み入れられた」と喜ぶ齋藤さん。「でもすべてをIT化はしない。品質に関わる部分は人の手と目の作業にこだわります」ときっぱり。

今後は、直売所や作業を見学できるスペースなど観光農園の要素も取り入れていきたいといいます。「池上農場の名前で買ってくれるファンを増やすことも大事。だからSNSは苦手だけど頑張っています!」。さらに大きな夢は、輸出を視野に「世界レベルのタマネギ」を作ること。淡路島産は甘くておいしいと定評がありますが、今後は周囲の生産者とも協力しながら、栽培方法を含めたより健康的で高品質なものを追求したい。「淡路島をタマネギで有名にして農家みんなが豊かになっていく未来」を思い描いています。