就農4年で栽培面積10倍を実現

「大阪をさつまいもの産地へ」というスローガンを掲げ、大阪府八尾市で独自ブランドのさつまいも「夢シルク」の生産・加工・販売を手がけるオオサカポテト。スーパーへの卸売に加え、バターや焼酎といった独自商品の開発、収穫体験やファーマーズマーケットの開催、企業とのコラボレーションなど多角的なプロモーションを通じて着実に歩みを進めています。

2021年に40aだった栽培面積は、現在では10倍となる400aにまで拡大しました。この目覚ましい成長の背景には、同社の夢に共感する「ファン」を増やし次々と巻き込んでいく代表・渡邊浩史さんの強い想い、そしてそれを実現するビジネスモデルがあります。

都市型農業の課題とニーズからビジネスを創造

2020年、広告代理店に勤務していた渡邊さんは、花農家から40aの畑を借り、大学時代から挑戦したかった週末農業を趣味で始めました。作物を育て収穫する喜びや、それを売る商いの面白さを見出し、一気にのめり込んでいきます。同時にSNSでのライブ配信も始め、農業の楽しさを共有するコミュニティを広げていきました。

しかし、週末だけの作業では出荷や販売に割ける時間に限界があり、収益も思うように上がりません。そこで、さつまいも収穫を中心とした体験農園を新たにスタートさせました。自身が初めて土に触れた時の胸の高まりを思い出し、農業に触れる体験そのものが価値になると考えたのです。

体験農園の運営を通じて、都市型農業の課題やチャンスも見えてきました。高齢化が進むにつれ、地域には耕作放棄地が増え続けています。一方で、体験農園には「農業をしてみたい」「子どもに芋掘りを体験させたい」というお客さんが毎週たくさん訪れます。仕事終わりに農業をボランティアで手伝ってくれる仲間も増えていきました。

都市型農業への確かなニーズを実感した渡邊さんは、2022年に会社を退職。広告代理店時代に培ったイベント運営のノウハウを活かし、体験農園を中心に農家としての道を歩み始めました。この時の根幹にあった想いが、「子どもたちに自然豊かな未来を届ける」「畑と生活者をつなげる」「耕作放棄地を減らす」というオオサカポテトのビジョンの原点となっています。

設備投資と6次産業化を進め、規模拡大へ

2022年に40aの畑から収穫したさつまいもは、約6トンに達しました。しかし、当時は保管倉庫もなければ出荷作業もすべて手作業で、ボランティアにも疲労の色が見え始めました。2023年に生産担当のメンバーが事業に加わったこともあり、渡邊さんは、収益拡大に向けた生産体制の整備を決断します。保管庫や洗浄機、農機といった設備投資や卸先の開拓を進めた結果、作付面積は40aから150aへ、さらに2024年には230aへと急拡大を遂げ、商業的な農業経営の骨格を築くことができました。

また、収穫量の約30%を占める規格外品の活用も大きな課題でした。これを価値に変えるべく、渡邊さんは加工会社と連携して6次産業化に着手し、ペースト加工やバターなどの商品開発を進めていきました。

一方で収穫体験は規模を縮小し、ターゲットを企業などの団体向けにシフトさせます。現在は、収穫体験を通じて加工品の販促や口コミによる認知拡大につなげるためのプロモーション活動として戦略的に継続しています。

パートナーの力を借り、夢の実現に前進

「ここまでアクセル全開で進んでこれたのは、応援してくれる人たちがいたからです。だからこそ、持続可能なビジネスモデルを構築しなければ」と渡邊さん。2025年にはエグゼクティブプランナーの仲野さんのサポートを得て、経営戦略の強化を図りました。支援の1年目は渡邊さんの「やりたいこと」を整理しながら、資金調達方法やパートナーとの協力体制を具体化し、これを事業計画に落とし込みました。2年目はその実行フェーズとして、各施策のプロジェクト化、ファン拡大やブランドの認知拡大に向けた企業とのコラボレーションやイベント開催などを進めています。

現在は、資金調達はスタートアップ支援に注力する銀行から、農地集約は自治体や JA の協力で、生産は業務委託メンバーが、さらに出荷作業は農副連携、加工は協力会社と、さまざまなパートナーがオオサカポテトのビジネスを支えています。この強固なパートナーシップは、渡邊さん自らが想いを伝えてアプローチし、そのビジネスに賭けてくれた人や企業とのつながりで成り立っています。仲野さんも、「消費地が近い都市型農業の利点に加え、渡邊さんの巻き込み力があれば成功すると確信しています」と期待を寄せます。

オオサカポテトの農業を支えてきたボランティアの中には、農家として独立した人もいます。かつての自分がそうだったように、やりたかった農業を始め、それを収益につなげる仲間の姿を見ることに大きなやりがいを感じるという渡邊さん。今目標とするのは、集約した耕作放棄地を活用して多くの担い手にさつまいも生産を担ってもらい、オサカポテトが仕入れと販売を一手に担うビジネスモデルの実現です。「少しずつでも、大勢が生産すればさつまいもは大阪の特産品になり、同時に休耕地問題を解決でき、すべての子どもたちに芋掘りを体験させてあげられます。大阪880万人のマーケットを満たす農業で、それを実現させたい」と渡邊さん。都市型農業の新たなモデル確立に挑んでいます。