日本初!さつまいものテーマパーク「12次産業化」の実現で地域も従業員も元気に/株式会社なめがたしろはとファーム 常務執行役員 佐藤大輔さん

茨城県行方市、北浦のほとりの丘の上に2015年、日本初のさつまいもテーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」がオープンしました。大阪府守口市に本社を置く食品メーカー・白ハト食品工業と地元のJAなめがた(現JAなめがたしおさい)がタッグを組み、実現した一大プロジェクト。さつまいもの生産・加工・販売の6次産業化にとどまらない「12次産業化」を掲げ地域を盛り上げています。

ミッションは地域への貢献

白ハト食品工業(以下、白ハト)は菓子店やたこ焼き店を運営する他、さつまいも菓子等を製造し、特に大学芋の国内販売シェアは80%以上を誇ります。順調に規模を拡大する中で課題となっていたのが、原料であるさつまいもの安定確保と、BCP対策としての製造工場新設でした。大消費地である首都圏と産地をつなぐ茨城県への進出を検討する中、一大生産地でありながら農業人口の減少に悩むJAなめがたと出会います。決め手となったのは2011年の福島第一原発事故。放射能汚染の風評被害にさらされる産地を救いたいと行方市への進出を決断、なめがたファーマーズヴィレッジ(以下、ヴィレッジ)のプロジェクトが始動しました。

「われわれのミッションは単なる菓子製造工場ではなく、地元住民に愛されながら関係人口を増やし地域に大きく貢献できる施設を作ること」と話すのは、運営会社であるなめがたしろはとファームの佐藤大輔さん。「若者が農業に夢を持って働き、おいしく上質なお菓子でお客さんを笑顔にし、遊びに来る若者や子どもたちが農業を知って体験し関心を持つという循環を生みだしたかった」。そこで目指したのは、さつまいもを育てて加工し販売するという6次産業化を超え、教育、観光、交流、子育て、地域貢献、IT農業の要素を加えた「12次産業化」でした。

多彩な施設で関係人口アップ

中核施設は統廃合によって閉校となる小学校を活用、地元から10万坪にも及ぶ耕作放棄地の提供を受け農地として蘇らせました。旧校舎内には工場とショップ、レストラン、体験しながら楽しく学ぶ「やきいもファクトリーミュージアム」を設置し、産地から商品が生まれるまでの過程に関心が向く工夫がされています。北浦を望む丘には景観を生かしたグランピング施設、クリやブルーベリー、イチジクなど収穫体験ができる農園も整備。オープン直後から注目を集め、決して交通の便が良いとは言えない立地ながらコロナ前の2019年には年間約28万人を集客しました。農園のオーナー制度を創設して行方市のふるさと納税に組み込んだところ、高額寄付件数の増加に加えて農園へ収穫に足を運ぶ関係人口のアップにも貢献しています。地元をホームタウンとするJ1鹿島アントラーズや、ゆかりのあるミュージシャンとのコラボも積極的に仕掛け賑わいを生み出しています。

若者が夢を叶える企業に

「農業をステキにしよう」をキャッチフレーズに立ち上げられたヴィレッジは、オープンに際して若い世代を中心に200人を雇用。そのうち150人が地元雇用で企業内保育所も設置しました。全従業員に農業も加工製造も販売も経験させることで、新たなアイデアの創出や横のつながりの強化につながっています。最新技術による育苗や、さつまいもを一年間傷ませずに貯蔵できるキュアリング施設の導入など新しい取組によって「『農はクリエイティブな仕事』と若い社員が楽しそうに働いてくれる」と佐藤さんは喜びます。

今後の目標は行方市の主要観光施設としてさらにコンテンツを充実させることと、「もっと夢あふれる職場にしたい」と佐藤さん。「社員の提案によって実現を目指している社内プロジェクトが27個もある。忙しいですよ」とほおを緩ませます。「企業として成長しながら若者の夢を実現させ、農業を通して地域を元気にする。そんな集団であり続けたいです」。